9月に見られる中秋の名月では、月がキレイに見えます。日本では古くからウサギが餅つきをしている姿が見えるといわれ、親しまれてきました。では、他の国では、どのように月を見てきたのでしょうか? また、どうしてこのような模様が見えるのでしょうか?
世界各地の月の模様の見え方
ここでざっと、世界各地で月の模様がどう見えているのかを紹介します。
- 餅つきをするウサギ(日本)
- 本を読むおばあさん(北ヨーロッパ)
- 横向きの女性(東ヨーロッパ)
- 薪をかつぐ男(ドイツ)
- 大きなはさみのカニ(南ヨーロッパ)
- バケツを運ぶ少女(北米)
- 吠えているライオン(アラビア)
上記以外にモンゴルでは犬の姿、中国ではガマガエルの姿、ギリシャでは銀の馬車にのるセレーネ(月の女神)、ロシアでは月に住む少女の姿が月面に見えるとされています。それぞれの地域で親しまれている動物や、その土地に語り継がれている神話などの人物にみたてることが多いようですね。
月に模様がみえるのはなぜ?
月の表面には白っぽい部分と黒っぽい部分があり、僕たちの祖先は月面上に様々な模様を見てきましたが、なぜこのように色の違う部分があるのでしょうか?
これを考えるには月の形成過程を考える必要があります。月が誕生した直後、月は高温でドロドロに溶けており、マグマオーシャンという状態でした。マグマオーシャンは長い年月をかけて少しずつ冷えていき、固まっていきます。この時、カンラン石や輝石などの鉄やマグネシウムを多く含む黒っぽい鉱物は重いため、下に沈み、カルシウムやアルミニウムなどを多く含む斜長石や長石などの白っぽい鉱物が表面に浮かび上がりました。
そのため、マグマオーシャンが冷えて固まったころの月の表面は白っぽい色をしていました。その後、巨大な隕石が月に衝突し、巨大なクレーターができました。このクレーターの割れ目から玄武岩を多く含むマグマが噴出し、クレーターの内部を埋め尽くしました。玄武岩は黒っぽい鉄やマグネシウムを多く含むため、噴出したマグマが冷えて固まった部分は黒っぽくなります。
このようにして、月の表面に白っぽい部分と、黒っぽい部分が形成されました。
現在では、月面上の黒い部分は「月の海」と呼ばれ、それぞれ名前がつけられています。
地球から見える月の模様が同じなのはなぜ?
月は自転しながら地球の周りを公転しています。ここで不思議に思われるのが、なぜ、地球からみた月の模様はいつも同じ形なのでしょうか? これは、月は約27日で地球のまわりを1周していますが、これと同じ周期で月が自転していることによります。
では、なぜ月の公転の周期と自転の周期が一致しているのでしょうか? これは偶然に一致したのではなく、理由があります。
月は地球の引力により、引き伸ばされ、楕円形の形状をしています。この状態で、月が公転周期よりも速く自転すると、自転の速度を弱める方向に地球の引力が働きます。
また、月が公転速度よりも遅く自転すると、自転の速度を速める方向に地球の引力が働きます。
この結果、最終的には公転周期と自転周期が等しい状態になったと考えられています。このような現象を「同期自転」と言います。
このような現象は月だけでなく、火星の「フォボス」や「ダイモス」、木星の「ガリレオ」など、太陽系の惑星にあるほとんどの衛星でも見られます。
月の裏側はどんな模様なの?
それでは普段、僕たちがみることのできない月の裏側はどうなっているのでしょうか?
このように、月の裏側は、地球側に見えている面よりも細かいクレータが数多くあります。そして、表側で見られた「月の海」が見られません。これは、月の地殻の厚さが、地球に向いている側と反対側とで異なることが原因と考えられています。
地球側の月面は、地殻が薄いため、ここに隕石が衝突すると、マグマが噴出して、クレーターを覆い隠してしまいます。これに対して、地球と反対側の月面は地殻が厚いため、隕石が衝突してもマグマが噴出すことがなく、クレーターの形が残ります。このため、地球と反対側の月面には、細かいクレーターが見られます。
まとめ
月に隕石が衝突してマグマが噴出し、黒く固まった部分(月の海)の模様を、僕たちの祖先は様々な動物や人物に見立てて親しんできました。そして、月の自転周期は公転周期と同じため、月はいつも同じ面を地球に向けており、僕たちはいつも同じ模様の月を見ることができるということでした。
今度、中秋の名月などでお月見をする際、ウサギの姿だけでなく、他にどのような姿が見えるのかを想像してみるのも面白いかもしれません。また、少し倍率の高い望遠鏡なら、月のクレーターまで見ることができるため、月面がどのような形をしているのか、もう少し詳しく観察してみるのもいいですよ。