一方で日本はPCR検査の数を抑えたため、医療崩壊しなかったという意見もあります。
どちらが正しいのでしょうか?
PCR検査とは?
検査対象の人の鼻の奥などから粘液(以降、検体と呼びます)を採取します。採取した検体の中に新型コロナウィルスが存在するかを確認しますが、この時、このウィルスだけが持つ特定の遺伝子が存在しているかを確認します。
ところが、遺伝子はそのままでは目で見る事ができないため、PCR法を用いて新型コロナウィルスだけが持つ特有の遺伝子を増幅させ、この遺伝子が確認できた場合に「陽性」と判断します。
採取した検体の中にウィルスが存在しなければ、PCR法で増幅させる対象の遺伝子が存在しないため、この遺伝子が増えることもなく、「陰性」と判断されます。
PCR検査の精度は?
感度と特異度
検査の精度を考える際に「感度」と「特異度」という考えが重要になります。感度
感度とは、感染している人が「陽性」になる確率です。新型コロナウィルスについて、PCR検査での感度は50~70%程度といわれています。
なんで、こんなに低いかと言うと、PCR検査にて鼻の奥などから検体を採取しますが、ウィルスが肺の中に存在しているけど、喉や鼻まで上がってこない場合もあるからです。
また、感染している人が「陰性」になることを偽陰性といいます。陰性だったからといって、油断して周囲にウィルスを撒き散らしてしまう可能性のある、危険な状態です。
特異度
特異度とは、感染していない人が「陽性」になる確率です。はっきりとした数字は公表されていないですが、新型コロナウィルスについてPCR検査での特異度は99%以上といわれています。
また、感染していない人が陽性になることを偽陰性といいます。
あー坊
あれ? PCR検査では、検体に新型コロナウィルスが存在しなければ陰性になるから、特異度は100%になるんじゃないの?
PCR検査が100%正しく行われれば特異度は100%になるよ。でも、検査の環境によっては採取した検体に新型コロナウィルスが混入してしまう可能性もあるね。
ぐんそう
個人が検査キットを使って検査したり、ドライブスルー検査のように除菌が徹底できていない環境での検査は特異度を上げることになるので望ましくないと思います。本記事のアイキャッチの画像に使っていますが。。。
はーちん
でも普通に検査していれば特異度は99%もあるから特に問題ないんじゃないかしら?
そうとも言えないよ。
以下に具体的なシミュレーション結果を載せたので見てみよう。
ぐんそう
検査で「陽性」となった人の何%が感染してるの?
仮に新型コロナウィルスの感染率が0.1%だとします。 そして、感度は70%、特異度は99%とします。この場合、100万人を無作為に抽出してPCR検査をすると、10,690人が陽性になります。
そして、陽性になった人のうち本当に感染している人の割合は6.6%しかありません。(感染していて陽性になった700人÷陽性の合計10,690人)
はーちん
!!!
6.6%だけ!?
思った以上に低いでしょ!
でもこの計算は色々と不確実な前提をもとにしているから、この数字を鵜呑みにはできないけどね。感染率はもっと高いかもしれないし、感度は低いかもしれない、特異度はもっと高いかもしれない。
ぐんそう
もし、仮に感染率が1%、感度が70%、特異度が99.9%とするなら、結果は以下の表のようになります。
陽性になった人のうち本当に感染している人の割合は87.6%に跳ね上がります。 不確実な前提をもとに計算しても意味がないため、精度に関する計算はこの辺で終わりにしておきます。何が正しいかは神のみぞ知るという感じです。
まとめ
PCR検査の精度は前提条件がはっきりしないため、何とも言えませんが、ただ、確実に言えるのは、感染者を見落とす(偽陰性になる)確率が無視できないということです。ある政治家は「自分はPCR検査で陰性だったので問題ない」と言っていました。でも、PCR検査の感度を考えると問題ないと言い切れるのでしょうか?
また、テレビにて「全国民にPCR検査を行って陽性者の隔離を徹底すべき」というようなコメントをする専門家もいますが、これもナンセンスです。なぜなら相当数にのぼる偽陰性の人を隔離できないからです。専門家と称する人がなんでいい加減なことを言うのか理解できません。
PCR検査を増やさないといけないと決めつけて、反対意見は無視して報道するマスコミに対しても疑問を感じざるを得ません。
PCR検査で陰性であっても感染していないとは言えないため、症状のない人がむやみやたらにPCR検査をすべきではないと思います。本当に検査が必要な人、治療が必要な人に医療リソースを避けるよう、デマに流されずに私たち一人一人がしっかり考えて行動すべきです。